晴歩雨描

晴れた日は外に出て歩き、雨の日は部屋で絵を描く

今年読んだ中で一番エキサイティングな本「生物の中の悪魔(ポール・デイヴィス)」(翻訳:水谷淳)

たいしてたくさん本を読む訳ではないが、今年読んだ中で一番エキサイティングな本「生物の中の悪魔(ポール・デイヴィス)(翻訳:水谷淳) 」(出版社:SBクリエイティブ)。

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生物と無生物の境界は何なのか?なぜ、生命は生まれ、進化してきたのか?

ニュートン力学から考えると、ビリヤードの玉の動きが全て予測可能なように、原子や分子の動きは全て予測可能に思える。物理法則だけから考えると、原子や分子をいくら組み合わせたところで、自ら動き回り、増殖し、子孫を残し、進化する生命が生まれるとは思えない。意識といったものが、どこから生まれるのか全く想像できない。

熱力学第二法則エントロピー増大の法則)によると、宇宙は無秩序な状態に一方向で流れるはず。熱力学第二法則に支配されている宇宙から秩序の塊のような生命が生まれる余地はないように思える。

量子力学では、確率、不確定性原理、ゆらぎ、トンネル効果、自発的対称性の破れ、といった言葉が飛び交い、ミクロの世界では必ずしも全てが予測可能な世界ではない。だからと言って、そこから生命の世界を導き出すのは無理がある。

本のサブタイトルは「情報で生命の謎を解く」となっている。一言で言ってしまうと、物理学と生物学の間を解く鍵は情報にあるという話(ちょっと強引かもしれないが)。内容は難しくて大半はあまり理解できない。しかも、本書を読んでも謎が解き明かされる訳ではない。が、読んでいてわくわくさせられるエキサイティングな本。

≪目次≫

  • 第一章 生命とは何か
  • 第二章 悪魔の登場
  • 第三章 生命のロジック
  • 第四章 進化論二・〇
  • 第五章 不気味な生命と量子の悪魔
  • 第六章 ほぼ奇跡
  • 第七章 機械の中の幽霊

≪以下、エピローグの最初を転載≫

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シュレーディンガーが一九四三年にダブリンでの講演で突きつけた難題は、いまだに影響をおよぼしつづけている。生命は物理学で説明できるのか、それともずっと謎のままなのか?仮に物理学で生命を説明できるとしても、既存の物理学で事足りるのか、それとも何か根本的に新しい事柄、つまり新たな概念や、さらには新たな法則が必要となるのか?

情報が物理学と生物学をつなぐ強力な橋渡しになることが、ここ数年で徐々にはっきりしてきた。そしてごく最近、マクスウェルがあの悪名高い悪魔を考え出してから一五〇年後になって、情報とエネルギーとエントロピーの相互関係が明らかになってきた。ナノテクノロジーの進歩によって驚くほど精密な実験が可能になり、物理学、化学、生物学、計算科学の交わる部分に位置する根本的な問題を検証できるようになってきた。これらの進歩は有用な手掛かりを与えてくれてはいるが、現段階では、情報の物理を生命系に当てはめる試みは断片的で場当たり的にすぎない。さらに、生命という秘密箱の中の難題を何か統一理論の中ですべて説明できるような、包括的な原理体系もまだ存在しない。

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エピローグの日本語の縦書き文章をテキスト化するのに、以下の「Free Online OCR」を使った。