晴歩雨描

晴れた日は外に出て歩き、雨の日は部屋で絵を描く

Xerox Star / XINS 思い出

富士フイルムゼロックス買収という話が出て、最近XEROX PARCやAltoの記事も目にしたので、Xerox Star関連の記事をネットで検索してみた。ネット上に多くのドキュメントが存在する。

Xerox Starを知っている人は今後どんどん減っていき、忘れ去られていってしまうのは非常に残念。現在ではあたり前になっているマウス、デスクトップ、アイコン等でのパソコン操作。これらを統合化したシステムとしてXerox Starは1981年に発売された。

1981年はApple IIIやMicrosoft MS-DOSの最初のバージョン1.0が出た頃。大型コンピュータではIBM System/370の時代。確かTSO端末と呼ばれているものがあり、キャラクタベースながらテレビモニターでカーソル移動しながらプログラムを編集できて画期的だと思った時代。タイプライターやパンチカードなんかを使ってプログラムを修正するのが普通だった時代。ミニコンピューターの世界では紙テープもよく使われていた。フロッピーディスクも8インチが主流で3.5インチがようやく開発された時代。カートリッジディスクなんかも使われていた。プリンターといえば、シリアルプリンターやラインプリンターが普通だった時代。

そんな時代にXerox Starは誕生した。1982年のJ-Starの新聞一面広告は衝撃だった。

Xerox StarやSmalltalkは、MacintoshWindows等のパソコンのユーザーインターフェースの基になったとよく言われれるが、確かにそれもすごいが、それだけではなかった。

当初からイーサネットをベースとしたネットワークシステム(XINS/Xerox Information Network System)として出来上がっていた。ファイルサーバー、プリントサーバー、メールサーバーなども含めたシステムだった。ゼロックス社内ではワークステーションから全世界のサーバーにつながっていた。遠隔地のファイルサーバーの文書を取り出したり、遠隔地のプリンターに直接印刷できた。印刷は文書アイコンをプリンターアイコンに重ねるだけでできた。メールもワイルドカードが使えたので、同じ組織の人間に簡単に一斉メールが送れた。

ワークステーションはマルチユーザー環境で、かつ個人のデスクトップ環境をサーバーに保管して遠隔地のワークステーションでそれを取り出して作業をする事ができた。

Star上の操作も、特化したキーボードやモードレスなしくみで今のMacintoshWindowsよりも使いやすかったように思う。操作のための専用のキー(開く、プロパティ、移動、転記、削除、同様、探索、繰返)があった。同様キーは便利だった。文書内では文字、図形、テーブル、グラフ等を直接編集できた。テーブルには計算機能も付けられた。CUSPという言語を使うと文書への文字などの差し込みやドロワーへの格納、印刷といったオペレーション全般を自動化できた。

システムのベースとなるアーキテクチャや言語も、仮想マシンオブジェクト指向など進歩的なものだった。当時、言語はCOBOLFortran、BASIC、アセンブラなどが主流だったと思う。

Xerox Starなどの開発環境Tajo/XDEもすばらしいものだった。デバッガやエディタが一体となったマルチウインドウの開発環境だった。エディタの出来も秀逸で、あれ以上のものは未だに無いのではと思わせる。その後、SunOS(UNIX)上で動作するMesaエミュレーターも開発され、Sun WorkstationのSunOS上のStar環境GlobalView上でXDEを走らせて、UNIX上のプログラムソースをXDE環境で編集するなんてトリッキーな事も出来た。SunOS上のエディタを使うよりも使い勝手が良かった。

Xerox Starはビジネス的には成功しなかった。サーバーも含めたネットワーク上の統合環境というあまりにも先進的すぎるシステムゆえに高額だった。最低でも1,000万円程度はしたと思う。それに大きく重たいシステムだった。金額的にも大きさからしても個人が買いたいと思うようなシステムではなかった。企業向けとしても簡単に導入できるようなものではなかった。クローズドなシステムでサードパーティーがアプリケーションを作れるようなものではなかったのも一因かと思う。

Macintoshは、Xerox StarやSmalltalkのパクリだという意見もあるが、スティーブ・ジョブズXerox PARCで見たSmalltalkの要素を、コンパクトに個人で使えるレベルのシステムに、かつ短期間で作ったのは凄いことだと思う。また、アラン・ケイが提唱したDynabookに近づいたのがiPadだと思う。

ただ、MacintoshWindowsに引き継がれているXerox Alto / Starの技術やアイデアは、Xerox PARCの研究者を始めとする多くの人々が長い年月をかけて生んだものであるのは確かなことだ。

日経バイト1990年3月号の特集「栄光のXerox Star」の中に、Starの当初の設計者たちが1982年に記した言葉というのがある。下に載せて置く。

『AltoはStarの貴重なプロトタイプとなった。[中略]Altoは、プロトタイプ開発としては史上最大のものだと言っても過言ではあるまい。8年以上に渡って数千人・年にのぼるユーザが利用した経験が蓄積されているからだ。Xerox社PARCのメンバたちによるAlto関連の実験計画は十指に余る。これらのシステムを開発した人たちの創造的なアイデアがなけれは、現在のような形のStarは登場しなかったはずである。』

以下に備忘録として関連キーワードやURLを載せておく。Star関連の詳しい事は以下にリンクしたページが参考になる。

■ Alto、Star、Smalltalk、Lisa、Mac、Win の関係をはっきりさせよう

http://sumim.no-ip.com/collab/19

Xerox Star - Wikipedia

https://ja.wikipedia.org/wiki/Xerox_Star

ゼロックスの「Alto」は、なぜ成功できなかったのか──パソコンの歴史を決定づけたプレゼンの舞台裏|WIRED.jp

https://wired.jp/2018/02/20/history-of-xerox-alto/

■「JStarの記憶」のブログ記事一覧-記入サンプル:東京太

http://blog.goo.ne.jp/u14662/c/ea1ca91cf830e2b577e04c05115f522d

■Jスター(富士ゼロックス) - 巣窟日誌

http://blog.goo.ne.jp/big_mikan_tokyo/e/00877e74a388322125576ec57b707137

■Mesa言語:柴田 芳樹 (Yoshiki Shibata):So-netブログ

http://yshibata.blog.so-net.ne.jp/2009-08-09-1

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